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不満点はあるものの,「Diablo」の名に恥じない作品だ――12年ぶりのシリーズ最新作「Diablo III」のレビューを掲載

日付:2012-06-05 22:09:42    アクセス回数:1565次

 2012年5月15日についにリリースされた,Blizzard EntertainmentのアクションRPG「Diablo III」。発売から1週間後には,PCゲームとして過去最高となる630万本ものセールスを記録している。

 日本国内においても,ローカライズされていないPC/Mac用の「洋ゲー」でありながら,かなりの注目を集めているようだ。これは4Gamerらしさでもあると思うのだが,4GamerのDiablo III関連記事はのきなみ注目度が高く,Twitterでも多くの反応を集めている。また「注目タイトルランキング」では,コンシューマの人気タイトルを押さえ,発売以来首位を独走中だ。

では実際のところ,ゲームとして面白いのだろうか。発売から10日ほど経過した段階でのDiablo IIIのレビューをお届けしたい。
 なお,5月23日のHotFixや30日(現地29日)の1.0.2パッチのような,Blizzardによるバランス調整によって,本稿で指摘した問題点が改善される可能性がある。また,基本システムの紹介に関しては控えめにしているので,あらかじめご了承を。

キャラクター育成の幅広さと試行錯誤のしやすさを両立
シリーズファンと未経験者のどちらでも楽しめる

 まずはRPGの柱となるキャラクター育成に関してだが,本作ではレベルアップに伴い新たなスキルや,スキルに特殊効果を付随する「Rune」を自動的に習得していくというシステムだ。従来のアクションRPGでは半ば常識と言える,スキルポイントやステータスポイントを割り振る要素は一切ない。

 そのため,初心者のプレイヤーでも迷わずに育成できるが,その一方で(ベータテストにおけるプレイ範囲を見る限り)誰がプレイしても似たようなキャラクターに仕上がるのでは,と懸念するプレイヤーが多かった。
 過去にはDiablo IIIのコンシューマ版が検討されているという報道(関連記事)もあり,良くも悪くもカジュアルゲームになったのではないか……と受け止める人もいたようだ。

 ところが,製品版が発売され,存分にプレイできるようになって明らかになった育成システムは,キャラクター育成の幅が広く,そのための試行錯誤のしやすさがうまく両立されたものだった。

キャラ育成の幅広さに関してだが,スキルやRuneの性能は,新しく習得するものが単純に上位というわけではない。たとえ序盤で習得するものでも,プレイスタイルによっては高レベル到達後も末永く使うことができるのだ。

 その幅広さを,比較的分かりやすい例で紹介してみよう。Barbarianのクラスは,DPS(damage per second:秒間あたりのダメージ量)を重視してアタッカー役を目指すのが定番だが,筆者がそれよりも好んだプレイスタイルは,敵を硬直させる「スタン」効果に特化するというものだ。
 Barbarianには,単体や攻撃範囲内のモンスターをスタンさせられるスキル+Runeの組み合わせが多く用意されており,それらのほとんどが序盤から中盤にかけて習得できる。また,アクティブ/パッシブスキルはスタンとの相性が良いものを選び,さらに装備に関してもスタンの発生チャンスを上げるべく,攻撃間隔の短さを優先している。

 そうして出来上がったキャラクターは,DPSこそ攻撃力特化のBarbarianに劣るものの,スタンに次ぐスタンで,場合によっては半ばハメに近い状況も作り出せる。パーティプレイのときにも,モンスターをスタンで釘付けすることで,Wizardなどの比較的装甲の薄い仲間が自由に攻撃でき,これはこれでなかなか楽しかったのだ。

 実際に発売後のコミュニティを見てみると,こういった育成例の話題はほかにも数多く出ている。
 このように同じ「近接アタッカー」でも,どのアクティブスキルを中心に使うかによって,戦い方が変わってくるのだ。
 新たに習得したRuneを眺めながら,スキルのまだ見ぬ活用法を考えたり,マジックアイテムなどを揃えていくうちに新たなシナジーを閃いたりすることもある。そういった試行錯誤の一つ一つが,たまらなく面白い。

 

そしてDiablo IIIでは,習得したスキルをいつでも自由に入れ替えられる(入れ替え直後にはクールタイムが発生する)ので,戦術の試行錯誤がやりやすいのだ。例えばパブリックゲームで一緒になった仲間のクラス構成に応じて,マイキャラのスキルセットを微調整する,といったことも気軽に行える。
 かつて「Diablo II」では,バランス調整パッチが当たるたびに,新キャラクターをレベル1から作り直さねばならなかったことを振り返ると,隔世の感がある。

 スキルとRuneの組み合わせを工夫するのは,Diabloシリーズ未経験者にはちょっと面倒そうにも思えるかもしれない。しかし,一番最初にプレイする難度「Normal」では,スキルの試行錯誤が必須というわけではない。極端な話,新たに習得するスキルやRuneを次々に選んでいってもクリアできる。

マルチプレイをカジュアルに楽しめるマッチングシステムと
強力なアイテムが並ぶオークションハウス


 Diablo IIIはシリーズ初の試みとなるシステムとして,マルチプレイにおける「マッチング」と,アイテムを自由に売買できる「オークションハウス」が導入されている。ここでは,それぞれを順に説明していこう。

 マルチプレイの「パブリックゲーム」では,自分が攻略したいクエストを選ぶだけで,同じ進行度のプレイヤーを自動的にマッチングしてくれるシステムが用意されている。さらに,マイキャラのレベルに応じて参加できるクエストの範囲が決まっており,編成されるメンバー間で大きなレベル差が生じない仕組みだ。
 そしてゲームに参加したあとは,拠点にある仲間の「Banner(旗)」をクリックするだけで瞬時に合流でき,かなりお手軽にマルチプレイが楽しめるのだ。英語による会話もあまり必要なく,一期一会的なプレイができるカジュアルさが嬉しい。

 もう一つのマルチプレイである「プライベートゲーム」もなかなか独特で,最初は戸惑うかもしれないが,慣れればスマートなシステムであることが分かる。
 まず最初に,一緒に遊びたいプレイヤーから「BattleTag」(固有のIDのようなもの)を教えてもらい,フレンドリストに登録する必要がある。リストはメッセンジャーのようなUIになっており,ここからパーティへの招待などが行えるという寸法だ。登録申請に対する拒否も可能。

 リストに登録されたプレイヤーは,ログイン/ログオフやゲーム状況などといったステータスが随時分かり,その気になれば現在進行中のパーティーに乱入することも可能だ。フレンド=友達という言葉から受ける印象より若干緩めの関係で,パブリックゲームで興味を持った相手に,積極的にフレンドの申請を行ってみても良いだろう。

ただし,プライベートゲームに「参加」するための環境が整えられている一方で,仲間を「探す」部分には若干のハードルがある。例えば従来シリーズでは,チャットルームをプレイヤーが作成できたので,「Diablo Retail JPN-**”」といった,国別のロビー用チャンネルを有志が立てていたのだ。
 しかし現状では,Blizzardが用意したチャンネルがあるのみ。サーバーが設置された地域のネイティブな言語圏に属さない日本人プレイヤーにとって,プライベートゲームで遊ぶ仲間を探すのは簡単ではない。

 そんなときには,ゲーム外のコミュニティを活用するのも一つの手だろう。導入や使い方などは,個々の責任で行ってほしいのだが,Diablo IIIのプログラムとは別に,メッセンジャーやIRC,Skypeなどのコミュニティツールでやりとりするという方法もある。実際に,日本人のDiablo IIIプレイヤーが数百人規模で集まるIRCチャンネルも存在するので,興味があれば探してみるのも良いだろう。

続いて「オークションハウス」は,名前からも分かるとおり,MMORPGでもよく見かける競売システム。今作では,モンスターを倒す以外にもレアアイテムを入手するチャンスがあるわけだ。もちろん不要になった品に関しても,NPCショップより高値で売却できる(可能性もある)。

 このオークションハウスが優れているところは,キャラクターがゲームプレイに入る前の段階で売買できること。すぐにキャラクターの切り替えができるので,めぼしいアイテムが出品されていたら,装備を確認しながらの品定めも簡単だ。

 もっとも「レアアイテムは自分自身で発見すべし」というプレイヤーも中にはいると思うが,これはこれでなかなか新鮮で,新しい形のトレジャーハントと言えるかもしれない。

 ただ,ピークタイムを中心に,オークションハウスに関連するサーバーの反応が鈍いなどの不具合も頻発しているようだ。オークションハウスは,プレイヤー同士でのリアルマネーによる売買も予定されているのだが,現状の不安定さを見る限りでは,サービスを行うには程遠いように思う。ゲームの進行上必須ではないのが,不幸中の幸いといったところか。

必要以上にコアプレイヤーを意識して迷走する“Inferno”

 残念ながら,現在のDiablo IIIにはいくつかの大きな問題を抱えているのも事実だ。上で触れた不安定なオークションハウスもそうだが,それ以上に深刻なのは,エンドコンテンツを中心としたゲームバランスの調整不足である。

 順を追って説明すると,今作では従来の最高難度Hellをさらに上回る,Infernoと呼ばれるモードが用意されている。Infernoのバランスを単刀直入に言うと,コアプレイヤーの視点でも「極めてマゾい」もの。レベルキャップに到達し,それまでに集めた強力な装備で身を包んだキャラクターが,雑魚モンスターや何の変哲もないトラップで即死するのが当たり前といった壮絶な世界である。
 こういったコンテンツを,ごく一部のコアプレイヤーに向けた“チャレンジングなお遊び要素”として導入し,Hellを実質の最高難度としてバランス調整されているのであれば,納得の難しさだったのではと思う。しかし,Infernoの攻略で得られる装備の性能は,Hellで得られるものを大きく上回っている。つまり,トレジャーハントでより強力な装備を手に入れるためには,必然的にInfernoへ足を運ぶ必要があるわけだ。

現在はリリース直後ということもあり,ドラスティックなバランス調整も行われている。こうしたバランス調整はしばらく続くと思われるが,それ自体はオンラインRPGではよくあること。しかし,トレジャーハントのために半ば意地になってInfernoをプレイしている人には,その難度バランスがあまりにも理不尽に感じられてしまう。
 筆者はこのInfernoに関して,キャラクターを育成する喜びよりも,攻略に感じるストレスのほうが上回っているため,少なくとも現状のバランスでは,無理にプレイしようとは思わない。それよりも別クラスのキャラクターの育成が有意義だと感じている。
 結果として,トレジャーハントを骨の髄まで満喫できておらず,かといってオークションハウスでInferno産のアイテムを揃えるのも味気ないので,いささか不完全燃焼気味だ。


問題点は多いが,十分に楽しめる作品だ
Blizzardの今後のバランス調整に期待

 オークションハウスやInferno以外にも,細かい部分で詰めの甘さが目立つ。本稿ではあえて触れていないが,粗を探そうと思えば,そう難しいことではないだろう。
 では,問題点が少なくないDiablo IIIは,ゲーマーにおすすめできないのだろうか。それは断じて「NO!」だ。遊び方次第では,現在のバージョンでも存分に楽しめるアクションRPGになっている。
 これから始めるプレイヤーに向けて,個人的にアドバイスするならば,現在の問題点の多くはInfernoを中心としたバランス調整不足に関連しているので,もしプレイして辛いと感じたら,いまは無理して攻略を続けるべきではないだろう。実のところ,NightmareやHellまでのプレイ範囲でも,ゲームとしてのボリュームは十分にある。

また,5つあるクラスをいろいろ体験してみてほしい。今作では装備を強化できるGemにレベル制限がなく,しかも装備から取り外して再利用できる。また,アイテム用の倉庫が同一アカウント内で共有されており,別キャラクターの育成環境が最初から整えられているのだ。

 エンドコンテンツのバランス調整の問題は,時間こそかかるかもしれないが,きっと解決されるはずだ。
 なにしろ2000年に発売された「Diablo II」は,購入後のサーバー使用料が無料であるにもかかわらず,驚くべきことに現在も,アップデートなどのサポートが続けられている。開発者のクオリティに対する飽くなき追求姿勢と,プレイヤー視点に立った運営体制は,世界中のゲーマーから絶大な信頼を得ており,それこそが「Diablo」「Warcraft」「StarCraft」の3シリーズを展開するBlizzardの礎となっているのだ。

 

 

 

 

>>http://www.4gamer.net/games/008/G000817/20120601051/

 

 

 

 

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